NPOの組織基盤強化の意味と意義

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コラム

NPOの組織基盤強化の意味と意義

NPOの組織基盤を考える上で、NPOの活動において組織基盤とは船であり、個々のプロジェクトは積み荷であると考えるとわかり易いと思います。

船の本体が強化されないまま、個々の積み荷を一見豪華に増やしていくと、いずれ船はバランスを失い沈んでしまいます。

NPOの組織基盤を問う際に考えておかないといけないのは、NPOの特徴として“参加の機会”を提供して“自立”するというスタイルがあること。

この特長を活かすため、組織基盤として注目したいポイントがあります。


 ①目標設定(ビジョン・ミッション・バリューの確立)

 ②人的基盤の確立
 ③財政基盤の確立
 ④ガバナンス(組織統治体制)

以上、4つの確立です。

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NPOにおける“自立”の概念をもう少し具体的に説明します。障がい者の生き方の中で鍛えられてきた新しい“自立”のスタイルがいいヒントになると思います。それは、自立の意味が、依存しない(他者の“世話”にならない)ことから、精神的な自立の保持(自律)即ち自己決定権(自分らしさ)をもって生きることに転換したことです。この場合、他者の“世話”を受けながら自立することになりますが、それは共感する人々に“参加の機会”を提供して、自立する。例えば、ボランティアに障がい者自立運動への“参加”の機会を提供して、障がい者が自立するということです。

ピーター・ドラッカーの“NPOの2つの顧客”という概念でも、支援者も顧客ととらえるのは、NPOが支援者に“参加”の機会を提供する対象ととらえるからです。“参加”の機会という視点で、NPO自らがもつ“支援者向けの商品性”の点検が大切です。まず、自分の団体が信頼のおける、託したくなる寄付先であるかどうか。これには信頼性を高めるガバナンスや魅力的な解決策の提示が必要です。

次にボランティア活動希望者の“参加”の受け皿となっているかということ。その為には高いボランティアコーディネート力が必要です。さらに団体の開催する“総会”を単なる形式と考えず“参加の場”であると考えることも大切です。つまり、“寄付・支援の依頼”とは、“請う”ことでなく、斬新な課題解決プロジェクトへの“参加“提案と考えるようにしたいものです。

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組織基盤として注目したい4つのポイントがあります。

◆目標設定について
ビジョンとは、目指すべき方向性・将来あるべき姿(将来像)であり“私たちが成功したら社会はこうなっている”というものです。ミッションとは、組織の使命・存在意義であり“私たちは○○するために存在している”というもの。バリューとは、価値・行動の判断基準であり、ミッションやビジョンを“何を大切にしながら達成するのか”というものです。
ビジョン・ミッションから具体的事業に落とし込むことが重要になってきますが、ビジョンと現状の間に存在する問題・課題(ギャップ)を解決してビジョンを達成することができます。

◆人的基盤の確立について
人的基盤の確立とは、事務局体制の整備とスタッフの活動しやすい環境づくり、それに参加しやすい組織づくりが挙げられます。かつて女性の社会参加運動で活躍した故・市川房江さんの言葉に「運動とは事務局なり」というものがあり、それだけ事務局体制は重要なものです。
また人的基盤にはもう一つ、責任体制と参加の階段というものが挙げられます。これは階段の最上段から、役員・運営委員・事務局スタッフ・会員・ボランティア・事業の参加者・関心層等という形になりますが、階段の上層部からは下層部に向かって“組織づくりの裾野を広げる働きかけ”が重要であり、下層部からは“参加の階段を登れる仕組みづくり”が大切です。              

◆財政基盤の確立について
財政基盤の確立は、大口収入だが変動的な外発的財源である助成金や受託事業収入と、小口収入だが安定的な内発的財源である会費・寄付、自主事業収入があります。一方、自主事業収入や受託事業収入などギブ&テイクの財源はNPOの活動を大きく支えるものの、資金の出し手はNPOの活動の「消費者」という立場です。また、会費・寄付、補助金や助成金の出し手はNPOの活動に共感する「参加者」です。
 
これらの特徴をふまえ、財源のバランスをとることで理想的な財政基盤の強化に繋がります。しかも、鵜尾雅隆氏が整理しているように、財源間の相乗効果を高め収入アップを図ることも重要です。寄付・会費収入が増加することで信頼性・安定性・公共性のイメージが改善され助成・受託事業収入の増加に繋がります。また、その増加にともないネットワーク・場・知名度のアップにより、自主事業収入の増加に繋がります。さらに自主事業収入の増加により、知名度・潜在的支援者の増加となり寄付・会費収入の増えることに繋がります。

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ガバナンスの確立については、1)意思決定とリーダーシップ、2)規定による運営、3)客観的なデータにもとづく経営の3点が挙げられると思います。
1)の意思決定とリーダーシップについては、説明責任や参加型合意形成といった“意思決定の透明さ”、現場の問題が経営層にすぐ届く“風とおしの良さ”や、状況に応じたリーダーシップの実践。またコンプライアンス(法令順守)、公正な運営の徹底などです。
2)の規定による運営とは、決済権限規定・経理規定などの整備、会計基準の採用などです。
3)の客観的なデータにもとづく経営とは、経年変化の確認など経営判断を助ける資料の整備などです。
なお、リーダーシップについては、専制型・民主型・放任型の3つのスタイルを使い分けられるのがベストだと思います。

最後に、NPO法施行5年を機に、“信頼されるNPO”とはどんなNPOかについて、サービス受益者からの信頼、支援者からの信頼、社会全体からの信頼の3者からの信頼を考え、日本各地のNPO支援センターのCEOが集う“民間NPOセンター・将来を展望する会“が、翌2004年に”信頼されるNPO”の条件7項目を作成したので、ご紹介したいと思います。

~信頼されるNPO、7つの条件~
(1) 明確なミッションを持って、継続的な事業展開をしていること。
(2) 特定の経営資源のみに依存せず、財政面で自立していること。
(3) 事業計画・予算の意思決定において自律性を堅持していること。
(4) 事業報告・会計報告などの情報を積極的に公開していること。
(5) 組織が市民に開かれており、その支持と参加を集めていること。
(6) 最低限の事務局体制が整備されていること。
(7) 新しい仕組みや社会的な価値を生み出すメッセージを発信していること。

以上、7項目は組織基盤強化を簡潔にまとめたものだと思います。ご参考になれば幸いです。

記事提供:早瀬昇氏

認定NPO法人日本NPOセンター 代表理事

社会福祉法人大阪ボランティア協会 常務理事

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