ソーシャルビジネス事例 フェアトレードLove&sense

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コラム

ソーシャルビジネス事例 フェアトレードLove&sense

ソーシャルビジネスとして、フェアトレードブランドLove&senseを展開する株式会社福市代表取締役の高津玉枝さんにお話を伺いました。

株式会社福市のミッションをお教えください

環境破壊や紛争、人身売買、児童労働‥などの背景には、途上国のかかえる「貧困」があります。日本にいる私たちも、そうした貧困の発生に遠隔的にかかわっています。

株式会社福市は、そんな貧困をなくすための手段としてフェアトレード、つまり“今までより意識の高いお買い物”に着目しました。まず、私たちは、フェアトレードの商品が身近にある環境を作りたいと思いました。フェアトレードに関心をもっていても、近くに売り場がなければ買えないからです。

次に、企業へのコンサルティング・PR事業にも力を入れていきます。フェアトレードなどを通じて、行動を変えつつある消費者の出現によって新たなマーケットが生まれ、それが企業にとっても大きなチャンスにつながると考えているからです。

持続可能な世の中に向けて行動を起こす個人や企業を増やしていく‥。それが福市の社会的使命だと考えています。

フェアトレードを始めることになったきっかけは何ですか

以前、20年間マーケティングの会社をやっていた頃、デフレ社会になり得意先が要望してきたものは、安いものを売る店づくりであったり、安いものを作って欲しいということでした。商品を作ることに携わっていると、例えば1000円で売るものがどう考えてもその価格でできているとは思えず、小売店に払うお金、卸屋さんに払うお金、海外から輸入するお金、その下に人件費や原材料費があるので、誰かにきっとしわ寄せが行っているであろうという思いがありました。

よく売れるものをつくり、企業の売り上げに貢献していくというのがマーケティングの仕事ですが、先ほどの話があって仕事を進めていくうちに、色んな矛盾や見えないものに蓋をしているという感覚があり、とても気になっていました。そんな時に、フェアトレードという概念で出会いこの仕事をスタートすることにしました。

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Love&sense の事業内容について教えてください

■事業創設初期
会社の設立は2006年になります。最初はマーケティング会社と合わせて2つの会社を経営していましたので、フェアトレードのイベントを百貨店等で年間に何回か開催するような小さな扱いでしたが、これは本格的に取り組まないと伸びていかないと思い、昔から経営していたマーケティング会社を2010年に閉じました。そして2011年から本格的にやろうと思った矢先に東日本大震災が起こり、その年はずっと震災支援プロジェクトEASTLOOPで走り廻っていました。

2012年に入り本格的に事業を進めるためには、直営の常設店が必要だと思い、阪急百貨店の方を紹介していただき、プレゼンテーションに行ったところ、うまく話がまとまり出店する運びとなりました。阪急さんも、ちょうどリニュアルグランドオープンだったので、新しいもの、今までと違う価値観のものを取り入れることに力を入れておられたので、本当にタイミングが良かったなと思っています。


■販売商品の概要
商品の生産国は、南米はブラジルとコロンビア、アジアはベトナムとカンボジアとタイ、アフリカはセネガルとブルキナファソ等です。基本的には現地の生産者パートナー団体やNGOと一緒に取り組み輸入しています。

扱っている商品は女性向けの服飾雑貨ではカバンやストール、アクセサリー関係、あとは軽衣料品です。Love&sense はセレクトショップというスタイルをとっているので、自社で輸入する商品だけでなく、国内のパートナー団体からも仕入れをしています。時々開催するイベントショップでは、他のフェアトレード団体にも入って頂き展示・販売をしてもらっています。多くのお客様にフェアトレードを知ってもらいたいと思っているので、バラエティに富んだ形にしています。

人気の商品は「シルク玉ネックレス」や「プルタブバッグ」です。シルク玉ネックレスは、木製ビーズを様々な色のシルクでくるんだもので、驚くほど軽くカラフルで顔映りを明るくさせます。1人で何本も持っておられるお客様もおられます。プルタブバッグは、空き缶から回収されたプルタブを丁寧に洗浄して商品の素材へ使われたもので、洗練されたデザインはロングセラー商品になっています。

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■直営常設店と阪急百貨店でのイベント
阪急百貨店の直営の常設店ですが、ファンになってくれる方も多く且つリピーターになってくれる方も増えて、順調に推移しています。阪急さんの中にあるということで信頼もして頂いています。

昨年から阪急百貨店うめだ本店で「エシカルウィーク」というイベントを阪急さんと共同企画で開催してきました。やはり流通の人たちが変わらなければいけないと思い、そのイベントを行ったことで、たくさんの来場者があったことや、こんな社会の動きがあるということに気付いていただくことができました。阪急百貨店さんの中でフェアトレードが1つのマーケットとして成立するようになれば、他の流通業でも追随してく可能性につながり、さらにマーケットが拡がります。取引が増えれば生産も増えることになり、途上国の生産者に恩恵が届きます。

イベントは大阪に限らず、東京・日本橋の高島屋さんや、九州の岩田屋さん、名古屋の三越さん、広島のそごうさんなどでも開催しています。今では、こちらからアプローチしなくても先方さんから声をかけてくれるようになっています。ただ、それがファッションやブームで終わってはいけないと思っていますし、実際にその危うさを感じてもいます。商品が売れなくなったら「エシカルのブームは終わった」というような言葉で終わらないようにフェアトレードの意味、重要さを今のうちに根付くように取り組んでいかなければならないと思っています。


■苦労していること
商品の品質が安定しないことに一番苦労しています。例えば、同じスカーフを発注しても、原材料が変わったから少し風合いが変わってくるとか、染めている色が毎回違っていたりとかということが頻発します。
またロングセラーのプルタブバッグでも、バッグのファスナーが逆向きについていたり、形が微妙に歪んでいたりしていたこともあります。フェアトレードの同業者の仲間も同様の事を言っており、品質の不安定は今のところ永遠の課題です。

ご提唱されている「これからの素敵な働き方・暮らし方」とは何ですか

今、働く女性との接点が多く、話をする機会が多々あるのですが、買い物をするときにお金を払っていますよね。これは丈夫、これはデザインが良い、これは品質と品格を備えたラグジュアリーブランド、これはトレンド物と。その買い物をするときに考える価値の中に途上国に思いを馳せるという新しい価値を見つけてもらったら、それが素敵な価値であり、素敵な働き方・暮らし方になると思って提案しています。


何故こんなことを思ったかというと、去年Bank of Americaが主催した「The Global Ambassadors Program」という女性のリーダーシップ研修に参加してきました。参加者は、世界各国のトップリーダーと言われる人たちで、有名な企業の副社長や外交官といった方もいました。その時、参加者の会話というのは「私の指輪は少数民族が作ったもので彼らの生活を応援しているの・・・」とか「私のこれはグアテマラの刺繍のバッグ。道端でも売っているけどしっかりしたルートから買わないと作った皆さんに恩恵がいかないからね。値段は3倍と高いけど・・・」というものでした。彼女らの身に着けているものは、そういう途上国に思いを馳せるものが多く、やはりグローバルに活躍している人ほど、そういうことに関心を持っているんだということが、物凄くカッコよく見えました。

これから日本も女性のリーダーが増えていく時代。その時に自分自身をどう表現するか?ファッションというのは自分自身を表現するものです。「私は何者であるか」を表すものです。例えば仕事に行くときには、スーツやジャケットを着ていき「私は信頼できる人間です」と表現するためです。ヴィトンやエルメスといったラグジュアリーブランドを持っていき、品格とか歴史というものにリスペクトするのも素敵な表現の仕方だと思います。それに加えて、新しい価値として途上国に思いを馳せていくような考えを持っているスタイルが、これから登場してきてもいいのではないかと思っています。


ただ現時点、日本にはその選択肢がありません。途上国の製品を入手するルートが殆どといっていいほどない現状に、私たちはもっと注力していかなくてはならないと思っています。

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これまでのLove&sense を振り返り、今後について教えてください

■始めた時の第1フェーズ
流通業の人たちは殆どフェアトレードを知らないし、関心もなかった。そんな中、フェアトレード商品が売れるという成功事例を作ったり、イベントを開催したりして「こんなマーケットがある!」ということを社会に伝える創造の時期でした。

そして今、やっとエシカルとか倫理的消費とかフェアトレードという言葉が認知度として30%前後まで来ました。まだまだだと思っていますが、昔の3%前後ということを考えれば、はるかに飛躍したと思っています。

また色々なところからイベント出店の要望がくるようになり、それは売る場所の人たちが関心を持ってくれたということで、第1フェーズはクリアできたと思っています。

■これからの第2フェーズ
商品の売り場が数多くできた時に、Love&sense だけですべての売り場を対応することはできません。最終的には日本人の考え方において、買い物時に途上国に思いを寄せるといった考え方や文化を植え付けるのが目標です。そのためには多くの仲間が必要です。

フェアトレード商品を供給する私たちの仲間にも、若い新しい人たちがたくさん出てきています。ただし、ビジネスに接点を持っていない人や思いだけで走っている人が多く、そういう人たちがビジネスを学ばないと、せっかく売り場ができても、いい加減なことをしてお店が潰れてしまったり、彼ら自身が潰れてしまったりしてはどうしようもありません。また、生産者にも迷惑がかかることにもなります。

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■フェアトレード・ビジネス塾のスタート
そこで、これからフェアトレードをする人たち、すでにフェアトレードをしているがさらに学びたい人たち、フェアトレードに関心のある人たち等の学びの場として、今年の秋から「フェアトレード・ビジネス塾(塾長:高津玉枝)」(仮称)というのを実施します。この企画は以前から考えていたことで、一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワークさんの自主事業の一環として主催して頂けることになりました。

一般企業の立場から考えると、株式会社福市の競合相手、ライバルを養成する塾になる訳ですが、私は自分の会社だけ生き残ろうと考えているのではありません。フェアトレードを広く普及させていくこと、最終的には日本人の買い物に対する考え方の中に途上国に思いを寄せるものを植え付け、それが文化になることを目的においています。

■将来のありたい姿
将来、「Love&senseは素敵なブランドだよね」と言われるようになっていきたいと思っています。店舗数を増やそうとは考えていません。それより、何よりLove&sense を通じてフェアトレードの市場が拡がり、信頼できるプレーヤー(Love&sense のような供給者)が増え、消費者も増え、世界のことを考える人が1人でも多くなって欲しいと思っています。

Love&senseのホームページ


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ソシオ・プロダクツ 菊地健

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