ソーシャルビジネス事例 東日本大震災支援EASTLOOPプロジェクト

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コラム

ソーシャルビジネス事例 東日本大震災支援EASTLOOPプロジェクト

東日本大震災復興支援EASTLOOPプロジェクトを立ち上げられた株式会社福市代表取締役の高津玉枝さんにお話を伺いました。

EASTLOOPプロジェクトと、立ち上げられた経緯について教えて下さい

■フェアトレードからの学び
このプロジェクトは、2011年の東日本大震災が起こったあとに、フェアトレードの力で被災地を元気にしようと思い、被災地を訪問し、そこで生まれたものです。
 
私はフェアトレードの事業をやっていたので、途上国へ何度も足を運んでいました。現地で出会った少数民族の人たちは「施しではなく仕事がしたい。自分たちはタルー族(という民族)なので誇りもあり、自分の力で生きていきたい」と言っていたのが印象的で、人間は誰かから与えられるばかりだったら、どんどん自尊心が無くなっていき無気力になっていき、自分に誇りを持てなくなっていくということを、見聞きしていました。

 
震災直後に被災地に入って、その経験話をもとに現地で「仕事を作ろうと思う」とあちこちで話して廻ったところが、全然相手にされず「こんな生きるか死ぬかという状態の中で被災した人たちに仕事をさせる気か!」と言われ、すごすごと帰阪しました。


■本格的スタート
再度5月に現地に行った時「仕事は必要かもしれない」という話になり、このプロジェクトはスタートしました。
震災では、誰もが自分の肉親か友人の誰かを一瞬にして失っており、精神的にも大変つらい状況にあり、それをどうやって解決していくかが重要でした。
 
家はない、田畑はない、友達は亡くなった、知人は行方不明というように何ひとつ明るいことがない、先がまったく見えない中で、自分が必要とされていたり、感謝されていたりということを通じて、幸せな気持ちになれるものの1つが「仕事」であると信念をもち、この事業をスタートさせました。
具体的には、小さなハート型のブローチを毛糸で編んでもらっていました。

販売価格は1個800円で、その半分は生産者のグループに届くしくみになっています。購入したお客様は、ハートのブローチの台紙カードの裏に生産者の名前が記載されているので、facebookで「いいね」を押してもらったり、facebookのメッセージを出力して編み手さんに届けたりしました。それが現地の網み手さんたちの一番の励みになりました。

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プロジェクトの成果や、その後の経緯について教えてください

まず、皆さんが元気になったのが、一番うれしいことです。被災地の人たちの中には、最初はかなり落ち込んでいる人もかなり多く、明日にでもどうにかなってしまうのではないかという悲惨な精神状態の人もいました。

手編みブローチの仕事を始めてからは、お友達もでき、現金収入も入るようになり、全然知らない購入者から「○○さんのブローチ買いました」とか「○○さんのは、可愛いから好きです」とか言ってもらい、どんどん元気になっていき、他の仮設住宅の方も誘うようになっていきました。
 
「仕事」という機会を通じて、編み物をするというコミュニティができ、皆さんが元気になったということが、一番うれしかった成果です。

2014年からブロジェクトの自立を目指して、私ども株式会社福市が担っていた管理業務を、一旦NPOに移管し、その後、現地にクロッシェ村という合同会社を作り業務移管し、地元の人たちで運営できる体制を整えつつあります。

プロジェクトの今後の展開、未来のありたい姿を聞かせてください

EASETLOOPプロジェクトは被災地支援ということだったので、編み物を何年も売り続けられるものでもなく、しかし今でも仮設住宅に住んでいる方もおられ、まだ継続していかなくてはならない状況です。まだしばらくの間は、チャリティグッズだから買って下さってもそれは長くは続きません。そこで、次のステップを模索し始めていました。

 
俯瞰してみると、あのブローチを何百個、何千個も編んだ人たちは、気がついたら編み物熟練工になっていたのです。知らない間に「技術」を身につけていた。そしてその熟練工が何十人も生まれていた訳で、見方を変えるとそれは一つの「資産」でした。

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そこで、これまで接点のあった毛糸メーカーさんやデザイナーさんと話をしましたところ、「ニットのサンプル編み」という仕事があるということが分かりました。手芸屋さんなどに行くと、「帽子やベストを毛糸で編むとこのようにできます」というサンプルが店内に飾ってあります。あれは、私は手芸屋さんが編んでいるものだとばかり思っていましたが、実は毛糸メーカーが販促物として納品していたものでした。ということは、そのサンプルを手芸店が1000店舗あって1000店舗が欲しいといったら1000個作らなくてはならない。
 
これまでサンプル編みは国内外で作られていました。しかし、中国は人の流動が激しく、新しい人が練習してすぐに編めるものでもない状況でした。また、国内でも編み手の高齢化が進み、対応できる人がどんどん減っていたことに加え、手芸店の減少により大量発注ができない状態になっていました。

そこで、東北のEASTLOOPの編み手さんたちが熟練しており、まとまった地域に居ることを毛糸メーカーさんに伝えると「すごく助かります」ということになりました。そして編み手という資産とサンプル編みニーズのマッチングが去年からスタートし、軌道にのり始めたところです。またサンプル編みだけでなく、製品も作って欲しいとの要望で、ニットのかごバッグのような製品を作り始めています。

編み手さんたちにとっては、新しいボリュームのある仕事ができてうれしいと好評です。まだまだ、営業・生産管理など、整えていかねばいけないことが多いですが、自立に向けて頑張っています。

EASTLOOPの将来の夢は何ですか

EASTLOOPは稀に見るプロジェクトだと思っています。

最終的には、東北に「ニットミュージアム」みたいなものを作りたいと思っています。

編み物がもたらした力を伝えていくミュージアムです。手仕事や編み物をすることで心が癒される、精神的に落ち着くというクラフトセラピーという言葉がイギリスにあります。    

 
東北の地で震災や津波で多くの方が亡くなった後に、EASTLOOPプロジェクトが始まって、皆さんが元気になったという実話を踏まえたミュージアムで、編み物の持っている良さを伝えていけるようなものが最終的にできたらいいなと思っています。


そしてそれは、世界の紛争地であったり、難民キャンプであったり、そういうところでも編み物を活用していけば、色々なことが劇的に変わるような気がします。編み物はどこでもできるものです。文字が読めなくても編み方を習えばできるものです。精神状態も安定してきます。資金や食べ物を渡すという支援だけでなく、この編み物の活用が標準化されると、当事者の自主的な回復力に基づいた取組みになります。そのようなきっかけにつながるミュージアムができたらいいなと思っています。

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ソシオ・プロダクツ 菊地健

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