ホームレス問題に取組むNPO法人Homedoor

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コラム

ホームレス問題に取組むNPO法人Homedoor

大阪でホームレス問題の解消に取り組むソーシャルビジネスを展開するNPO法人Homedoor理事長の川口加奈さんにお話を伺いました。

事業を立ち上げられたきっかけと経緯について

■ホームレス問題との出会い
中学生の14歳のときに、通学で乗り換えていた新今宮駅を「降りると危ない」と周囲に言われ、何かがあると思いました。そこで自分で色々と調べていき、ホームレス問題を抱える釜ヶ崎のあいりん地区のことを知りました。さらに炊き出しボランティアがその地区で行われているのを知り、そこに参加したのがホームレス問題との最初の出会いでした。

最初は、ホームレスの人に対して「もっと勉強していれば、ホームレスにならなくてすむのに、自業自得だ・・・」というふうに、あまりよく思っていませんでした。しかし、ホームレスの人と話し、調べていくと「貧困の連鎖」という自己責任では片づけられない背景があったことを知りました。
 
そして自分でも何かできないかと考えるようになっていたちょうどその時に、新聞で「若者たちによるホームレス襲撃事件」を知りました。若者たちの「なぜ、自分たちが悪いのか」という発言は、以前の自分の「ホームレスは自己責任」という考え方に似ていました。その若者たちと今の自分自身との違いは、適切に知る機会があったか、なかったかの差だと思いました。

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■最初の活動、そして大学2年の2010年にHomedoorの立上げ
そこで私は、このホームレス問題を周囲に伝える側になろうと考えました。まずは自分で書いた作文を中学校内で発表しましたが、残念ながら同級生には伝わらず、もういいかなとも思っていました。しかし、ホームレス問題は日本の社会構造のひずみから起きている問題であり、「自分はホームレス状態を生み出す加担者でもあるのではないか、いま自分が何もしなければ何も変わらないのではないか」と思い始めました。
  
今度は文章に書いて伝えようと思い、新聞を作って、全校生徒に配布しましました。そして少しずつこの問題に興味を示す生徒が増えてきました。そこで、その生徒を誘っての炊き出しや、100人規模で2泊3日の釜ヶ崎フィールドワークを企画しました。

そんな中、ボランティア親善大使に選ばれ、アメリカのワシントンDCに行く機会を得ました。その時の意見交換のなかで、「あなたは社会に良いことをしたいだけなのか?それとも社会を変えたいのか?」と問われたのが、今でも印象に残っています。

その一方で、自分が何もできていないことのギャップに苦しむことになりました。おにぎりを配るという夜回り活動で、ホームレスの人から「路上脱出したい」という相談を受けましたが、その方法が思いつきませんでした。

これをきっかけに、路上脱出できるしくみ、誰もがやり直せる社会を作っていきたいと思い、ホームレス問題を学べる大学に進学し、大学2年生のときにHomedoorという団体を立上げました。

事業のスタートと現在の事業内容について

■事業の3つの柱
Homedoorは「ホームレス状態を生み出さないニホンへ」ということを目的に立ち上げた団体で、
① ホームレスになりたくないと思ったら、ならなくてすむ「入口封じ」(相談窓口:ホムネット事業・駆け込み施設:ホムハウス事業)
②脱出したいと思ったら脱出できる「出口づくり」(就労支援:HUBchari事業、HUBgasa事業・生活支援:CHANGE事業、ホムパト事業、hot&house事業)
③ホームレスに対する根深い偏見を取り除こうとする「啓発活動」(釜Meets、講演、ワークショップ、ホームレス問題の授業づくりネット事務局)
以上の3つの柱で取り組んでいます。

■事業のスタート
団体を立ち上げて、一番最初に取り組んだのが「出口づくり」です。路上から脱出する時には高い壁があります。家を借りるとなった時、日本では保証人、住民票、そして保証金がいります。保証人がいればホームレスになどなっていません。今住んでいることを証明する住民票がなければ家を借りることができません。また、保証金も大阪市内であれば最低でも10万円くらいは必要です。その10万円を稼ごうにも、家がない、連絡先がない、携帯電話も持ってないと、まず雇ってくれる会社はありません。

その高い壁を少しずつ登れるステップを作り、どんな人でも路上脱出できる手段、選択肢を用意するという形で、一旦Homedoorの事業で働いてもらい、お金が貯まったら家を借りていくというステップを考えました。そしてその事業(仕事)を作ろうと検討していて、ホームレスの方の7割が得意とする自転車修理の技術を活かしたHUBchariという事業からまずスタートを切りました。

そしてその次にHUBgasaという事業に取組み、次に企業や行政からの仕事を頂いてくるようになり、その中で生活支援活動もスタートしました。

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■ホムネット
企業や行政からの委託業務をホームレスの方の就労支援の場として当てようと進めている事業です。Homedoorで支援を受けた人たちを、次は企業との就業紹介のマッチングをしていきます。

具体的には、失業や住居を喪失された方に、まずHomedoorを知って頂くことを3つの形で実施しています。
① インターネットカフェなどの深夜営業の店舗の中にポスターを貼ってもらい、ホームレスになる段階の前の方に対する告知活動を行う。
② 深夜営業店舗のWebに広告バナーを掲載して頂いたり、検索ブラウザで “お金がない” “困った”などと検索するとHomedoorの相談窓口が表示されるようにして頂く。
③ ホムパト(夜回り活動)時の弁当やおにぎりに“路上からでも働ける仕事があります”という求人情報を記載したホムパトカードをつけて、ホームレスの方に配布する。

そして、次のステップとして自分の意志で仕事を求めてHomedoorに来られた方の相談を受けて、さまざまな提案をします。例えば、民間企業からの委託の仕事があるから紹介をしたり、路上を脱出して仕事をし始めてお金が貯まったら家を借りるサポートをします。そして家が借りられたら、銀行口座を開設したり、住民票を復活させたりし、一般企業との職業紹介のマッチングをします。

この一連の枠組み、ステップをHomedoorならではのセーフティネットとして提供するのがホムネットです。

■hot&house
Homedoorにやってこられる多くの方は、HUBchariをはじめ就労支援事業で働き、路上脱出を目指し、お金を貯めます。1 日 2,000 円~6,000 円の給料を手にするため、安いホテルなどで夜を明かすこともできます。しかし、そのお金すらも節約して少しでも早く路上から脱出しようと、野宿をしながら働きに来ている人もいらっしゃいます。過酷な路上生活や仕事の疲れを癒すことができ、よりストレスなく路上脱出をできるような施設をつくれたら…そんな思いから生まれたのが「hot&house」です。

【ホームレスの人のニーズ】・・・hot&houseで、これらを解決しようと考えました。
・路上生活で一番辛いのは、寝る場所がないこと。どこへ行っても、自分が居てていいと思える場所はないように感じる。
・仕事がない時、どうやって時間を潰そうか、いつも考えている。家があったらゆっくり休めるけど・・・。
・アサリ(ゴミの中からごはんを探すこと)で食いつないでいるから、たまにはあったかくて栄養のあるものを食べたい。
・路上生活を始めて、安心して寝ていられたことは一度もない。襲撃されるんじゃないかと思うと怖くて寝られない。ゆっくりと布団で寝たい。
・路上生活は、生活に必要なものをすべて持ち歩かない。でもさすがに、働く時は持ち歩けないから、コインロッカー代がかかる。たまに洗濯もしたいからコインランドリー代もバカにならない。節約したくてもなかなかできない。
・本当は人と話すのは好きだけど、路上生活を始めてから声を出す場合も減ってしまった。誰かと他愛のない話をして笑えたらなぁ。

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■HUBchari
HUBchariは、ホームレスの方々のほぼ共通の特技である自転車修理を活かしたシェアサイクルシステムです。大阪市内で現在、8拠点(相互乗入れ拠点を含めると18拠点、内1拠点はレンタサイクルポート)のどこで自転車を借りても、どこで返してもいいレンタサイクルの進化版です。

そんなHUBchariを運営するのは、ホームレスの方や、生活保護を受けている方々です。その方々への中間的就労の場として、HUBchariは機能しています。Homedoorでは、HUBchariなど10拠点以上で仕事を作ってきて、今までにのべ160名の方が働き、55%の方がそれらをきっかけに次の仕事を見つけました。

HUBchariは、ホームレス・生活保護問題の解決を目指すだけではなく、自転車のシェアリングによる自転車問題の解決も同時に目指しています。こうする事で、働く方にとっても単に支援される側となるのではなく、自転車問題を解決する側、支援する側にまわってもらい、より働きがいを感じてもらえればと思っています。

HUBchariを設置するのは、お店やビル、ホテル、そして公共機関のノキサキです。「ノキサキ貢献」という形の新たな企業の社会貢献活動として、場所を提供して頂いています。また、行政の自転車対策、生活保護対策の一環で、2012年度は大阪市住吉区と、2013年度は大阪市北区と提携しました。

HUBchariでは、ホームレスの方や生活保護受給者に6〜12ヶ月間の「就労リハビリ」という就労支援を実施しています。働くことから遠ざかり、就労意欲も下がってきている方に、再び働く機会を提供し、働く中でその方の就労阻害要因となっている事柄を見いだして、それを改善できるように個別のサポートを実施しています。本格的な就労へのステップとして提供しているのです。

■HUBgasa
国内で、年間1億3000万本も消費されるビニール傘。深刻な環境問題の原因になっています。Homedoorでは、いらなくなったまだ綺麗なビニール傘をご寄付で頂き、ホームレスの方や生活保護受給者が、HUBgasaとしてリメイクし、HUBchariの拠点やインターネットにて販売しております。

HUBgasaのしくみは、企業さまや個人さまからの寄付で、不要になったビニール傘を頂き、Homedoorで就労支援のプログラムを受講するホームレスの方や生活保護受給者らがビニール傘のリメイクを行います。そして、HUBchariの各拠点やご協力店舗にてHUBgasaを1本100円から販売します。

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■CHANGE
CHANGEでは、元ホームレスの方や生活保護受給者が自分らしく生きるきっかけを提供するため、生活支援と就労支援の講座を行っています。行政との連携の中で、また寄付会員の皆さまのご協力の下で、毎週実施しています。

CHANGEでの講座は、生活習慣改善に向けた日常支援講座と、就労に向けてお手伝いをしていく就労支援講座に大きく分かれています。それぞれの内容は様々で、集団での講座受講と面談による個別支援を合わせながらやっています。

【日常支援講座】
・落研サークルによる落語体験講座
・みんなで作る!料理講座
・プロに学べ、家計管理
・看護師による健康講座
・パッチワーク教室
・自己表現講座
・季節イベント(クリスマス会等)
・家庭訪問、定期面談による個別アドバイス

【就労支援講座】
・受かる!履歴書写真撮影会
・HUBchariでの現場就労体験
・講座「働く意義を皆で考えよう」
・先輩に学べ、就職のコツ
・面接トレーニング
・履歴書の書き方講座
・ハローワークに行ってみよう
・ビジネスマナー講義
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■夜回り活動「ホムパト」
ホムパトでは、ホームレスの人々の凍死や餓死、襲撃事件を防止すべく、大阪市北区を3コースに分かれて100人近いホームレスの人々に手作りのお弁当やおにぎり、毛布や生活必需品等を配布しています。また、単に物資を配るだけではなく、出合いの場として、生活・医療相談を行い、希望する方にはHUBchari 等の働く場の紹介や、生活保護受給のお手伝いをし、路上脱出のお手伝いをしています。

【配布物資】
皆さまから頂いたご寄付で、栄養のある温かいおにぎりやお弁当を中心に、季節に応じた生活必需品も配布することができております。
(※)おにぎり、お弁当・具材(梅干し、佃煮、ふりかけ等)・カップ麺・スープ、お茶・毛布・カイロ・お風呂券・歯ブラシ・歯磨き粉・シャンプー・タオル・お菓子・栄養補助食品・サバイバルシート・衣服・靴下・カミソリ・路上脱出ガイドなど

■釜Meets
釜Meetsは、3ヶ月に1度、第4日曜日に実施しているイベントです。釜ヶ崎のまち歩き“釜歩き”やホームレスの方への炊き出し・カタタタキ、ワークショップへの参加など濃い体験ができます。

活動の収入状況

2014年度は約4000万円でしたが、2015年度は約7800万円の収入です。この中で一番多いのはホムネットの中で企業や行政からの業務の受託です。他に啓発事業で約170万円、寄付が約200万円。あとは助成金と補助金で2000万円ほどです。

事業の成果について

これは、相談者数と就労支援者数でみています。
相談者数は、2015年度は前年比1.8倍で161名です。これは、ポスター掲示、Webでの呼びかけ、ホムパトが功を奏したのだと思います。支援してきた人の平均年齢は57歳ですが、10歳若い平均年齢が46歳くらいの方たちで、ホームレスになる前段階の相談者が増えたのは「入口封じ」として相談窓口機能が果たせたのは良かったと思います。
就労支援者数は、過去4年間で160名以上の人が働きだしました。今も常時20~30名の就労枠を作っています。

現状の課題とその対応について

収益構造において、事業収入に偏っていて寄付が少ないことが挙げられます。収入7800万円のうち純粋な寄付が200万円(3%程度)です。収入は大半がホームレスの方への人件費になっていて、Homedoorの職員の人件費に廻す分は少なく、寄付を増やして職員を増やし、体制を強化したいと考えています。

ただ、ホームレス支援となると共感を呼びにくい活動で、一般の市民の方でも企業でも「自己責任でホームレスになった人は支援したくない」「何故、そういう人の為に寄付を?」といった声が多いのが実態です。ホームレスの方たちへの偏見を解いて「応援しよう」という社会の流れにしていけたらと思っています。

ご苦労されたこと、嬉しかったことなど

一番苦労したのは、大学時代に団体を立ち上げて、右も左もわからない状況で事業というもの作り出してきたことです。
HUBchariを立ち上げる際に、拠点となる場所を借りる資金もなく、先進都市のパリやロンドン、ニューヨークのように、大阪市でも検討してくれないかと提案をしに行きましたが、取り合ってもらえませんでした。ホテルやカフェの軒先を貸してもらうことも考えましたが、その方面の知り合いもおらず行き詰まり、飛び込み営業をしていましたが無理でした。

突破口になったのは、長期間にわたり軒先を借りるのではなく、1週間だけ借りるという話をして借りることができ、自転車の貸出し実験をしました。それをメディアが取り上げてくれ、その実績を持ってまた営業に廻り、それでやっと1つのホテルが軒先を貸してくれることになり、そこから他のホテルも関心を持ってくれるようになり、少しずつ拠点が増えていきました。

苦労して進めてきたHUBchariで、ホームレスの方たちが働くようになり劇的に変化されて、路上脱出をする姿を見るのは本当に嬉しかったです。

今後の展開計画や将来の夢について

これまでは、就業支援と生活相談に特化してきましたが、この秋からは路上から脱出する時に住居「ステップハウス」を用意しました。今は3部屋ですが、将来は20部屋まで増やしていき、それを1つの施設として運営していきたいと考えています。それは私が高校2年の時に画用紙に書いた“夢”で、形にしたものです。
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ただそれは、収入事業として運営していけるプロジェクトではないので、資金的には寄付ベースになる訳ですが、どのようにして寄付を集めるかはこれからの課題です。

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ソシオ・プロダクツ 菊地健

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