NPO強化のために~地域プロデューサーが育つ「おうみ未来塾」

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コラム

NPO強化のために~地域プロデューサーが育つ「おうみ未来塾」

滋賀県にある中間支援組織、淡海ネットワークセンター(公益財団法人淡海文化振興財団)では、市民活動やNPOの活動強化のための人材育成プログラム「おうみ未来塾」を運営しています。

「おうみ未来塾」とは

市民活動やNPOが地域運営の一翼を担う時代となった今、創造力とネットワークにより、企業や行政だけでは解決できない地域課題に取り組む人が求められています。おうみ未来塾は、こうした地域課題に取り組む「地域プロデューサー」が育つ塾を目指しています。

「地域プロデューサー」とは、地域の課題を発見し、解決のための方策を考え、そのための運動や事業をおこすことのできる人です。言い換えれば、市民力、事業力、ネットワーキング力を兼ね備えた人のことです。おうみ未来塾では、こうした地域プロデューサーに求められる能力を養うことを中心に取組んでいます。

昨年までの16年間、13期の活動で307名の卒塾生を輩出しています。

おうみ未来塾の特徴

1.塾生の主体的な参加による塾づくり
塾生の主体的な参加により塾活動の企画運営を行います。カリキュラムの骨格を示しつつ、塾生の意向と学びの状況を踏まえ、柔軟性あるカリキュラムを基本としています。

2.多彩な塾生で構成
地域や分野、所属、世代を超えた多彩な塾生で構成します。地域を創る共通の思いを持つメンバーが、グループワークやディスカッションを重ねながら互いに高めあっていきます。

3.地域や活動の現場からの学びと実践
講義を聴くだけでなく、市民活動やNPO・まちづくりの現場のフィールドワークを通し、草の根から地域や社会を変えるものの見方や考え方を学びます。塾活動後半には、「地域プロデューサーのための実践を学ぶ場としてのグループ活動」を行っています。

4.幅広いネットワークの形成
地域や市民活動のキーパーソン、企業や行政、また、それぞれの地域で活動する卒塾生など、多様な主体と幅広いネットワークづくりを目指しています。

塾の仕組み

毎回25名前後で開催し、受講期間は18ケ月間です。6月~11月は基礎実践コースで、各地でのフィールドワークを中心に概ね月1回の講義があります。12月~翌年11月は創造実践コースで、フィールドやテーマにより、塾生数名からなるグループを構成し、現地調査や考察・実践等のグループ活動を行います。卒塾の前にはグループ活動の成果発表会を行っています。
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グループ活動の事例

塾活動が終わってから、現在も続いているグループ活動の3つをご紹介します。

まず、第6期の「ビワマスを琵琶湖のシンボルに育てる」というグループです。琵琶湖の固有種でシンボル的なビワマスを、南湖でもう一度再生させる取り組みです。ビワマスの稚魚を放流予定の坂本地区の大宮川流域の自治会や子ども達などに、この活動の意味を説明し理解してもらい、大宮川にビワマスが遡上する環境を地域ぐるみで整備しました。そして、稚魚の放流活動を行いました。

またそうした活動を卒塾後も続け、活動開始から5年後に、60年ぶりに大宮川にビワマスが遡上していることが確認されるようになりました。滋賀県水産試験場の専門家の協力を得ながら、そしてこの活動についての地域での想いの輪を広げながら、実際にビワマスの遡上を成功させる活動を展開しました。

次に、第7期の「ひょうたんからKO-MA」というグループの活動です。近江八幡市の島学区では、かつてほんがら松明(たいまつ)という地域の伝統行事がありました。菜種の殻を活用した大松明をつくる地域の共同作業です。しかしそれが廃れてしまっているので、その再生を地域の人々と共に取り組もうとしました。そして再生の過程を、映像作家の協力を得てドキュメンタリー映画にする活動を行いました。

ほんがら松明再生のためには、ほんがら松明の価値を地域の人に理解してもらう必要がありました。完成したドキュメンタリー映像を見ると、そうした作業を一つひとつ行いながら、ほんがら松明を再生する活動は、地域の産業と文化と共同性を再生する活動そのものであることがわかります。この活動でも、地域の人々への想いの輪の広がりと、映像分野での専門家の協力が大きいことがわかります。

またこのグループは、同じ学区の琵琶湖に浮かぶ小島で稲作が行われている「権座」でコンサートを行い、権座の価値を地域の人々に再発見してもらう活動行いました。地域の人々も権座の活動に乗り出します。近江産で栽培されていなかった幻の酒米を権座で栽培し、地元の酒蔵に委託して「権座」銘柄の日本酒を製造販売し、注目を浴びています。この活動はその後、グループから地元に引き継がれていっています。

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次に、第10期の「おうみこっとん夢つむぎ」のグループによる地域の資源を再生し地域で新たな事業を展開する活動です。これは、彦根市の稲枝地区で休耕田を活用して綿の栽培を復活し、糸や布の商品化をはかっています。かつては彦根地域でも綿の栽培が行われていたようで、綿にかける想いの輪を地域の人々に広げながら、休耕田を利用して綿を栽培し活用する活動に展開しました。

そして、琵琶湖博物館の学芸員で琵琶湖周辺の綿の栽培の詳しい方、綿栽培を経験された高齢者の方、糸つむぎやデザインの専門の方との連携を図ります。さらに、綿の栽培と製品化の面で、地元の障がい者施設との連携も深めています。綿栽培の復活を通して、地域での新たなつながりと事業おこしを行っている取り組みです。

グループ活動から学ぶ

第1に、地域の固有資源を発見し再生活用するということです。

ビワマスという固有資源を南湖でも復活させる、ほんがら松明という失われかけた地域資源を農村コミュニティの再生を図りながら復活させる、権座という貴重な地域資源を発見し活用する、休耕田という利用されていない資源を使って失われていた綿の栽培を復活し活用することです。

その際に映像作家やデザイナー等の専門家と連携しながら、再生と活用を行っていることに注目する必要があります。


第2は、想いを広げることです。
紹介した事例では、取り組む活動について個人の想いがグループ内の想いに広がり、それがグループ外に、さらに地域へ広がっています。専門家が協力してくれるのも、グループの活動を契機に地域の人々が動き始めるのも、そうした人々にグループの想いを共有してもらう活動があったからにほかなりません。

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第3は、新しいお金の流れを作ることです。

新たな事業を起こすには、新たなお金の流れを作り出すことが必要です。これまで紹介してきた事例で言えば、権座という銘柄のお酒を製造販売する、新たな木綿製品開発を行うなどです。お金が絡むとそこに責任が生まれ、コミュニティビジネスとしての自律性が求められることになります。


第4は、グループ活動の学習効果です。

未来塾は当初より、グループでの政策形成と実践を卒塾の要件としてきましたが、その効果が大きいことがわかってきました。異なる経験を持つ人々が対話し、想いの輪を広げ、一つの政策をつくりあげ、実践します。グループワークとは、グループ内の想いの形成にほかなりません。これは、分権社会を特徴づける異なるセクター間の協働の体験そのものだと言えます。グループ活動を通じて、どのように振る舞えば効果的な協働が行えるのかを自ら学んでいるのではないでしょうか。

 

記事提供:歌代泰和氏

淡海ネットワークセンター(公益財団法人淡海文化振興財団) 常務理事・事務局長

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