NPOのブランデイングとは

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コラム

NPOのブランデイングとは

一貫したメッセージをすべてに落とし込む

NPOにブランディングやブランドは、なかなかイメージしにくいかもしれません。ブランドというと、大きな企業や高級ブランドを想像する人も多いかと思います。でも、ブランディングというのは「ブランド化する」という意味で、一貫したメッセージをあらゆる事に落とし込んでいくということです。

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そういった意味では、高級ブランドや企業だけでなく、他との差別化を図ったり、「この団体はこういう団体」と気づいてもらったりするために、一貫したメッセージを伝えていくことは、どのような活動にも必要なことです。

一番大事にして伝えたいメッセージは何か

私が特にNPO団体にブランディングが必要と感じている理由に、NPOの目指していることは抽象的な場合やすんなりと理解するのは難しい場合が多いという点があります。「こういう社会を創っていきたい」とか「こういう社会に変えていきたい」というNPOが必ずもっているミッションやビジョンは、一般的ではないことや具体的にはイメージしにくいことが多く、抽象的であればあるほど人によってとらえ方が異なり、共有しにくくなります。

代表はすごく熱い想いでやっているのに、団体のスタッフはミッションをなかなか理解できないとか、代表に聞けばなんとなく理解はできるけれど自分の言葉で説明はできないというような内部での課題もよく耳にします。

また、活動をつづけていくと周囲から、「こういう事に困っているんだけど…」といった相談や頼れごとが増えていきます。NPOには、困っている人をほっておけない、頼まれると断れないという方も多いので、いつのまにか事業が手広く増えていて、本来果たすべきミッションが見えづらくなったり、迷いが生まれてきたりといったことが起こりやすいと思います。

企業の場合、採算性や利益率が事業をするかどうかの判断軸になり得ますが、NPOの場合はそれだけでは判断しきれないことがよくあります。そのため、自分たちの判断軸をもつことが必要になるのですが、その判断軸は常にビジョン・ミッションであるべきだと私は考えています。

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ビジョン・ミッションを明らかにする

ビジョン・ミッションは、迷ったら立ち戻る、団体の進むべき方向を指し示す羅針盤となるものです。向かう方向が定まれば、活動は必ず楽に、もっと自由にできるようになります。自分たちは何のために存在していて、何をするのかという、ビジョン・ミッションを、わかりやすく自分たちらしい明確な言葉にして、一貫したメッセージとして内外に浸透させていくことは、活動が続き、関わる人が増えるほどに重要になってきます。

ビジョンやミッションなどの理念をしっかりと共有できるようになると、団体の想いが伝わりやすくなり、それによって、共感が集まり、人や支援が集まり、やりたい事業をどんどん実現していけるという好循環が生まれてきます。

ブランディングは、伝えたいメッセージをデザインに落とし込み、デザインを整えていくことも含まれますが、まずはメッセージそのものであるビジョン・ミッションを明らかにすることからはじまります。

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行動やデザインにも反映させていく

最初にお話したように、ブランディングは一貫したメッセージをすべてに落とし込み、ブランド化していくことです。落とし込むすべてというのは、スタッフやボランティア、理事、会員など関わる人たちの行動や、ロゴや団体のカラー、ユニフォームやチラシ、名刺、事務所そのものまで、あらゆるものを指します。軸となるビジョン・ミッションが明確になるからこそ、「自分たちのビジョンを実現するために必要な行動」や「こういう行動が私たちらしい」ということが、明らかになっていきます。

そして、その行動を表現物で表したらどうなるか、デザインにしたらどうなるかということを考え、統一していくことで、他との差別化や存在を認知してもらえる状態になっていきます。

まずは活動の原点を振り返ることから

ブランディングの進め方は色々あり、考え方も様々ですが、NPOの方にぜひ試していただきたいのは、まずは団体の活動の原点となる「こういう団体や活動が必要だ」と思った最初のきっかけや当時の想いはどこだったのかを振り返り、その原点を団体の中で共有していくことです。

その上で、これから先にも残しておきたいことや続けていきたいことはどこなのかということを話し合う中で見極め、ビジョン・ミッションを明らかにしていきます。すでにビジョン・ミッションのある団体であっても、自分たちの1番大事にしたいことは何かをメンバーの中で確認し合うということをぜひ定期的にしていただけると、モチベーションやチーム力が高まるのでおすすめです。

団体のブランディングをする場合、次に、ビジョン・ミッションを実現するためにメンバーが取るべき行動を固めていくと、団体の中で同じ想いをもって行動していけるようなステップを作ることができます。そして最終的にはビジョン・ミッションをデザインに落としていくという流れになります。

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NPOのブランディングをもっと気軽に

NPOのブランドづくりは、ビジョン・ミッションがこれで伝わっているのか、自分たちらしい言葉なのか見直すところからはじまります。その機会をもっていただくだけでもきっと活動への取り組み方が変わったり、気持ちが楽になったり、伝わりやすくなったり、変化が見られると思います。

NPOにあったブランディングの第一歩をもっと簡単に取り組めるものがあればと考え、2017年1月に「NPOのための想いを伝わる言葉にするワークブック」を制作、発売しました。前半では今回ご紹介したようなブランディングをより詳しく解説し、後半は書き込んでいくなかでビジョン・ミッションを整理していくことのできるワークシートになっています。そういったものも参考にしながら、ぜひ気軽にブランディングをはじめていただければと思っています。

記事提供:柏木輝恵氏

NPO法人シミンズシーズ 事務局次長

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